脊椎の病変 / 脳梗塞
脊椎の病変 / 脳梗塞

首や腰の痛み、手足のしびれ、筋力低下——これらの症状は、さまざまな疾患が原因となります。頸椎椎間板ヘルニア、腰椎椎間板ヘルニア、頚椎症性脊髄症、腰部脊柱管狭窄症、坐骨神経痛、腰部神経叢炎など、首や腰にはいくつかの代表的な病気・症状があり、それぞれ原因や経過、必要な検査が異なります。
原因となる病気を正しく理解することが、適切な治療への第一歩です。この記事では、それぞれの疾患の特徴・症状・診断の流れをわかりやすく解説します。なお、いずれの疾患でも診断は症状や診察所見を最優先に進められ、MRIなどの画像検査は確定診断を補助する手段として用いられます。
首や腰のつらい症状の多くは、脊椎(背骨)の構造、椎間板(骨と骨の間のクッション)、脊髄や神経根(神経の束)の異常によって引き起こされます。また、神経が脊椎を出た後の「末梢神経」の炎症や障害も、下肢のしびれや痛みの原因になることがあります。症状だけで原因を特定するのは難しく、問診・身体診察・画像検査などを組み合わせて診断を進めていきます。
頸椎(首の脊椎)の骨と骨の間にある椎間板が後方へ突出し、神経根や脊髄を圧迫する病気です。加齢による椎間板の変性や、過度な負荷が原因となることが多く、30〜50代の方に多くみられます。
首や肩の痛みに加え、肩から腕・手指にかけての痛み、しびれ、筋力低下などが生じます。どの椎間板が突出しているかによって、症状が出る腕や指の範囲が異なります。重症例では脊髄が圧迫され、手指の細かい動作がしにくくなることもあります。
まず問診と神経学的診察(しびれの範囲、筋力、腱反射の確認など)で病気を疑います。画像検査はその裏づけとして行われ、MRIではどの椎間板が突出しているか、どの神経が圧迫されているかを確認できます。ただし、MRIで椎間板の突出が確認できても無症状のことがあるため、画像所見だけで治療方針を決めるのではなく、症状との一致を慎重に確認します。
腰椎(腰の脊椎)の椎間板が突出し、神経根を圧迫する病気です。腰椎では特にL4/5・L5/S1の椎間板で起こりやすく、若い世代を含め幅広い年齢でみられます。
腰痛に加えて、お尻から太もも、ふくらはぎ、足先にかけて痛みやしびれが走る「坐骨神経痛」が代表的な症状です。重症例では足の筋力低下や、排尿障害が生じることもあります。咳やくしゃみ、前かがみで痛みが悪化することが多いのも特徴です。
診察では下肢の筋力、感覚、腱反射の異常を確認します。直脚挙上テスト(仰向けで足を上げると痛みが出るか)なども重要な診察手技です。画像検査としてはMRIが最も有用で、ヘルニアの位置・大きさ・どの神経根が関与しているかを評価できます。軽症で危険な徴候がない場合、発症早期から必ずMRIが必要なわけではなく、保存療法で改善しない場合や手術を検討する際に実施されます。
加齢による頚椎の変形(骨棘形成)や椎間板の膨隆によって脊柱管が狭くなり、脊髄が圧迫される病気です。50代以上に多く、頚椎の老化に伴う変化が主な原因です。
手指の細かい動作がしにくい(箸が使いにくい、ボタンがかけにくい、字が書きにくいなど)、歩行がぎこちない・ふらつく、排尿しにくいといった症状が特徴です。単なる肩こりや首こりとは異なり、両手足の症状や歩行障害が伴う場合は要注意です。
診断において最も重要なのは神経学的所見です。手指の巧緻運動障害(10秒間でグーパーが20回以下など)、痙性歩行の有無、反射亢進などを確認します。病気が疑われた場合にMRIを行い、脊髄圧迫の部位・程度を評価して確定診断につなげます。症状が進行性の場合は手術が必要になることがあります。
腰椎の脊柱管(神経の通り道)が狭くなり、馬尾神経や神経根が圧迫される病気です。加齢に伴う椎間板の変性、骨棘形成、靱帯の肥厚などが複合的に原因となります。中高年に多く、高齢化に伴い増加している疾患です。
最大の特徴は「間欠性跛行」です。歩くと足がしびれたり痛くなったりして、少し休むと楽になり、また歩けるようになります。前かがみや座った姿勢では症状が和らぐことが多く、立ち仕事や下り坂で悪化しやすいのも特徴です。
問診では間欠性跛行の有無、症状が出るまでの距離、前かがみで楽になるかなどを確認します。身体診察で下肢の筋力・知覚・腱反射を評価します。レントゲンでは骨の状態を確認しますが、神経圧迫の有無や重症度の評価にはMRIが欠かせません。ただし、MRIの所見だけで診断するのではなく、症状・診察所見との一致を確認することが重要です。
坐骨神経痛とは、お尻から太もも・ふくらはぎ・足先にかけて走る「坐骨神経」が刺激・圧迫されることで生じる痛みやしびれの総称です。独立した病名ではなく症状の呼び名であり、その背景にはさまざまな原因疾患が存在します。腰や下肢のしびれ・痛みで受診される方の中で、非常に頻度の高い訴えのひとつです。
片側のお尻から脚にかけての電気が走るような痛み、じんじんとしたしびれ、灼熱感などが典型的な症状です。立ちっぱなしや長時間の座位で悪化しやすく、重症例では歩行困難になることもあります。症状が両側に出る場合は、脊柱管狭窄症による馬尾神経の圧迫なども考慮されます。
坐骨神経痛を引き起こす代表的な原因は、腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症です。腰椎ヘルニアでは突出した椎間板が神経根を圧迫し、狭窄症では脊柱管の狭小化が神経を締め付けます。そのほか、梨状筋症候群(お尻の筋肉が坐骨神経を圧迫する)、骨盤内腫瘍、腰部神経叢炎なども原因となることがあります。同じ「お尻から足の痛み」でも、原因によって治療法が異なるため、原因疾患の特定が重要です。
まず問診で痛みの範囲・性質・悪化する姿勢・発症の経緯を確認し、直脚挙上テストなどの身体診察で神経の関与を評価します。原因疾患を特定するうえでMRIが有用で、神経根の圧迫部位や程度を画像で確認できます。ヘルニアや狭窄症が疑われる場合、MRIは治療方針の決定にも役立ちます。梨状筋症候群など、MRIで明確な異常が映りにくい場合は、神経伝導検査や超音波検査を組み合わせることもあります。
腰部神経叢炎(腰仙骨神経叢障害)は、腰椎を出た神経の束(神経叢)が炎症・腫れ・障害を起こす疾患の総称です。糖尿病や自己免疫疾患、腫瘍、外傷などが原因となることがあるほか、原因が特定しにくいケースもあります。CIDP(慢性炎症性脱髄性多発根神経炎)など、神経全体に炎症が広がるタイプの疾患も含まれます。
下肢(特に大腿部)の強い痛みやしびれ、筋力低下が主な症状です。腰椎ヘルニアや脊柱管狭窄症と症状が似ているため鑑別が重要です。片側の急な痛みから始まることも、両側性・慢性的な経過をたどることもあります。
神経叢炎の診断は、神経根障害(ヘルニアや狭窄症など脊椎由来)との鑑別が大きな課題です。通常のMRIに加え、MR neurography(末梢神経を選択的に描出する特殊なMRI技術)では、神経の腫れ・肥厚・異常信号を評価でき、神経叢病変の診断・鑑別に役立ちます。造影MRIが推奨されることもあります。ただし、MRI単独で診断が完結することは少なく、筋電図や神経伝導検査などの電気生理学的検査と組み合わせて、病変の部位(脊椎由来か神経叢か末梢神経か)を特定していきます。
MRIは椎間板、脊髄、神経根、周囲の軟部組織を高精度で描出できる検査です。レントゲンでは見えない神経の圧迫や炎症の有無を評価でき、首や腰の疾患の確定診断を補助するうえで重要な位置を占めています。しかし、MRIで異常が見つかっても無症状のことがあり、反対に症状があってもMRIで明確な異常が映らないこともあります。
そのため、MRIはあくまで「診察所見と合わせて使う補助診断」であり、画像所見だけで治療方針を決めることは適切ではありません。末梢神経疾患では電気生理検査との併用が特に重要で、MRIは「形の異常」を、電気生理検査は「神経の働きの異常」を捉える検査として互いを補います。
こうした症状があるときは、整形外科や脊椎・末梢神経を専門とする医療機関への相談が勧められます。
排尿しにくい、尿が漏れる、便が出にくい、会陰部がしびれるといった症状は、重度の神経圧迫のサインであることがあります。こうした場合は、馬尾症候群や強い脊髄圧迫など緊急性の高い状態も考えられるため、早急な受診が必要です。
首や腰の痛み・しびれは、頸椎ヘルニア、腰椎ヘルニア、頚椎症性脊髄症、腰部脊柱管狭窄症、坐骨神経痛、腰部神経叢炎など、さまざまな疾患・症状が原因となりえます。坐骨神経痛はひとつの症状名であり、その背景には腰椎ヘルニアや狭窄症をはじめ複数の原因が存在します。それぞれの疾患には特徴的な症状と経過があり、正確な診断には問診・身体診察を中心に、必要に応じてMRIなどの画像検査や電気生理検査を組み合わせることが重要です。症状が続く場合や悪化している場合は、早めに専門医への相談をお勧めします。
脳梗塞は、脳の血管が詰まることで血流が途絶え、その先の脳細胞が酸素と栄養を失って壊死してしまう病気です。脳卒中のなかで最も頻度が高く、全体のおよそ7割を占めます。
脳細胞は一度失われると元には戻りません。しかし、発症からできるだけ早く治療を開始できれば、詰まった血管を再開通させて後遺症を最小限に抑えられる可能性があります。「おかしい」と感じたら、様子を見ずにすぐに救急要請をしてください。
| 病型 | 原因 |
|---|---|
| アテローム血栓性脳梗塞 | 比較的太い動脈の動脈硬化により血管が狭くなり、詰まる |
| 心原性脳塞栓症 | 心臓(主に心房細動)でできた血栓が流れて脳の血管を詰まらせる |
| ラクナ梗塞 | 脳の細い血管が詰まる、小さな梗塞 |
| その他 | 動脈解離、奇異性脳塞栓症、血液疾患などによるもの |
脳梗塞の症状は、突然あらわれるのが最大の特徴です。次のような症状が急に生じた場合は注意が必要です。
発症時刻は治療方針を決めるうえで最も重要な情報です。時刻がわからない場合は「最後に normal(普段どおり)であることが確認できた時刻」をお伝えください。
上記の症状が数分から数十分でおさまり、完全に消えてしまうことがあります。これを一過性脳虚血発作(TIA)と呼び、脳梗塞の前触れです。TIAを起こした方の一部は数日以内に本格的な脳梗塞を発症するため、症状が消えても必ず早急に受診してください。
問診で発症時刻や経過、既往歴・内服薬を確認したうえで、神経学的診察を行い、以下の検査を組み合わせて診断します。
治療の目的は、詰まった血管を再開通させ、脳のダメージを最小限に抑えることです。時間との勝負であり、適応となる時間には厳密な制限があります。
脳梗塞は再発しやすい病気です。一度発症した方はもちろん、危険因子をお持ちの方は次の点を意識してください。
次のような場合は、脳梗塞やその前触れが隠れていることがあります。「気のせいかもしれない」と様子を見ずに、お早めに受診してください。
症状がおさまっていても、受診が必要な状態であることは少なくありません。とくに、一度出た症状が自然に消えた場合(前述のTIA)は、早い時期に評価を受けることが大切です。気になることがあれば、遠慮なくご相談ください。
一方で、次の症状が突然あらわれ、今も続いている場合は、受診のご予約をお取りいただくよりも、そのまま119番通報していただくほうが安全です。
この場合、ご自身やご家族の運転で来院されると、かえって治療の開始が遅れてしまうことがあります。救急隊は、その時点で必要な治療が受けられる医療機関を選んで搬送します。ご家族が異変に気づかれた場合も、ためらわずに救急要請をお願いします。
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