ゲパント製剤における予防薬と急性期治療薬の併用療法について|大阪頭痛脳神経クリニック | 大阪・梅田の頭痛外来

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ゲパント製剤における予防薬と急性期治療薬の併用療法について

ゲパント製剤における予防薬と急性期治療薬の併用療法について|大阪頭痛脳神経クリニック | 大阪・梅田の頭痛外来

2026年8月06日

ゲパント製剤における予防薬と急性期治療薬の併用療法について

片頭痛とは何か

片頭痛は世界中で約11億人が苦しんでいる神経疾患で、そのうち90%以上の方が反復性片頭痛(月に頭痛日数が15日未満)を患っています。日本においても多くの方が片頭痛に悩まされており、日常生活に大きな支障をきたしています。

近年の研究により、片頭痛の発症には「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」という神経伝達物質が重要な役割を果たしていることが判明しました。CGRPは頭蓋内の血管周囲で増加し、片頭痛発作時に痛みや炎症を引き起こします。この発見により、CGRPを標的とした新しい治療法が開発されるようになりました。

CGRPの役割
・片頭痛発作時に頭蓋内血管で濃度が上昇
・血管拡張と炎症反応を引き起こす
・痛みの信号を脳に伝達する
・CGRPの注入により片頭痛様の頭痛が誘発される

片頭痛治療の基本的なアプローチ

片頭痛の治療には大きく分けて2つのアプローチがあります。

急性期治療(頓用治療)

発作が起きた時に痛みを和らげ、日常生活への復帰を目指す治療です。従来はトリプタン系薬物や鎮痛薬が使用されてきましたが、最近ではCGRP受容体拮抗薬(gepant:ゲパント)と呼ばれる新しい薬剤が登場しています。

予防治療

片頭痛発作の頻度や程度を軽減することを目的とした治療です。月に2回以上の発作がある場合や、急性期治療だけでは日常生活に支障がある場合に検討されます。

アメリカ頭痛学会のガイドラインでは、多くの患者様において急性期治療と予防治療の組み合わせが最適な片頭痛管理に必要であるとされています。予防治療を受けている患者様でも、突破性の片頭痛発作は起こりうるため、適切な急性期治療薬の併用が重要になります。

CGRP標的療法について

CGRPを標的とした治療法は、片頭痛治療における革新的な進歩です。現在、CGRPまたはその受容体を標的とする8つの治療法が片頭痛の急性期治療および予防治療として有効性が確立されています。

アメリカ頭痛学会は最近、CGRP標的療法について「豊富で質の高いエビデンスに基づき、予防治療の第一選択として考慮すべき」との声明を発表しました。これは、従来の治療法と比較して高い有効性と良好な安全性プロフィールを示すエビデンスが蓄積されたことを意味します。

CGRP標的療法の特徴
・片頭痛の根本的な病態メカニズムに作用
・従来の治療法より高い選択性
・良好な安全性プロフィール
・注射薬(モノクローナル抗体)と経口薬(gepant)の選択肢

アトゲパント(予防治療薬)とウブロゲパント(急性期治療薬)

アトゲパント(Atogepant)

アトゲパントは経口のCGRP受容体拮抗薬で、米国とヨーロッパで成人の片頭痛予防治療薬として承認されています。1日1回60mgの服用により、片頭痛発作の頻度と重症度を軽減します。従来の予防薬と異なり、片頭痛に特異的に作用するため、副作用が少ないことが特徴です。

ウブロゲパント(Ubrogepant)

ウブロゲパントは米国で前兆の有無を問わず成人の片頭痛急性期治療薬として承認されている経口CGRP受容体拮抗薬です。片頭痛発作時に100mgを服用することで、痛みを軽減し機能回復を促進します。

これまで、これら2つの薬剤を同時に使用する安全性については、31名の小規模な薬物相互作用試験で臨床的に意味のある薬物相互作用がないことが示されていましたが、実際の臨床場面での大規模な安全性データは不足していました。

TANDEM研究の概要

研究デザイン

TANDEM研究は、反復性片頭痛患者におけるアトゲパント予防治療とウブロゲパント急性期治療の併用の安全性と忍容性を評価する、米国で実施された第4相、2期間、多施設共同、非盲検試験です。

実施期間:2022年3月7日から2023年4月4日

参加者数:263名(スクリーニング352名から選定)

研究方法
治療期間1(1-12週):参加者はアトゲパント60mg 1日1回を予防治療として服用し、片頭痛発作にはゲパント以外の従来の急性期治療薬を使用しました。
治療期間2(13-24週):参加者はアトゲパント60mg 1日1回の継続に加えて、片頭痛発作にはウブロゲパント100mgを必要時服用(4週間で最大8回まで)しました。初回服用から2-24時間後に頭痛が解消しない場合は、追加のウブロゲパント服用または従来の急性期治療薬の使用が可能でした。


表1: 参加者の背景データ

研究結果の詳細

治療完了率

263名の参加者のうち、221名(84.0%)が治療期間1を完了し、治療期間2に移行しました。これは高い治療継続率を示しており、薬剤の忍容性が良好であることを示唆しています。

ウブロゲパント使用状況

治療期間2において、ウブロゲパントを少なくとも1回使用した188名の患者の平均使用日数は6.6日(標準偏差5.0日)でした。また、113名(60.1%)の患者が少なくとも1回の追加服用を行いました。

表2: 主な治療関連有害事象の発生率

併用療法の安全性プロフィール

重要な安全性データ
治療関連有害事象の全体発生率:治療期間1で49.6%、治療期間2で43.1%と併用により増加なし
重篤な有害事象:各治療期間で1例ずつ(尿管結石症、頸髄症)、いずれも治療薬とは無関係
治療中止に至った有害事象:全治療期間で9.9%(26名)
死亡例:研究期間中に0例

表3: 治療継続状況と中止理由

臨床的意義と患者様へのメリット

この研究が示す重要なポイント
・アトゲパント(予防薬)とウブロゲパント(急性期治療薬)の併用は安全で忍容性が良好
・併用によって新たな安全上の問題は認められない
・各薬剤を単独で使用した場合と同等の安全性プロフィール
・ウブロゲパントの使用頻度が多い患者でも安全性に問題なし
この研究結果は、片頭痛治療において以下のような臨床的意義を持ちます


個別化医療の実現
予防治療を受けていても突破性発作が起こる患者様に対して、同じCGRPメカニズムに作用する急性期治療薬を安全に併用できることが確認されました。これにより、より個々の患者様の病状に応じた治療戦略を立てることが可能になります。


治療の一貫性
予防薬と急性期治療薬が同じメカニズムで作用することで、治療アプローチの一貫性が保たれ、相加的または相乗的効果が期待できる可能性があります。


長期的な安全性
12週間という比較的長期間の併用でも安全性に問題がないことが示され、実際の臨床現場での使用に対する信頼性が高まりました。

治療を受ける際の注意点

医師との相談が重要
この併用療法は医師の処方と適切な管理のもとで行う必要があります。以下の点について医師と十分に相談することが大切です
・現在の症状や発作頻度
・これまでの治療歴と効果
・他の併用薬剤との相互作用の可能性
・肝機能や腎機能などの検査値


適応となる患者様
この研究では以下の条件を満たす患者様が対象でした
・18-80歳の成人
・1年以上の片頭痛歴
・月4-14日の片頭痛日数
・月15日未満の頭痛日数
・重篤な心血管疾患がないこと
・オピオイド系鎮痛薬の使用が月4日未満


モニタリングの必要性
治療開始後は定期的な医師との面談により、効果と副作用の確認が必要です。特に以下の症状がある場合は速やかに医師に相談してください
・予想以上の疲労感や食欲不振
・便秘の悪化
・体重の大幅な増減
・その他の気になる症状

まとめと今後の展望

TANDEM研究は、片頭痛治療における新たな可能性を示す重要な研究結果です。アトゲパント60mg 1日1回とウブロゲパント100mg頓用の併用療法は、12週間の治療期間において安全で忍容性が良好であることが証明されました。

研究参加者263名の解析により、併用によって新たな安全上の懸念は認められず、各薬剤を単独使用した場合と同等の安全性プロフィールが確認されました。これにより、予防治療を受けながらも突破性発作に悩む患者様に対して、より効果的で安全な治療選択肢を提供できるようになります。

研究の限界と今後の課題
・参加者の多くが女性・白人であり、他の人口集団での検証が必要
・12週間という比較的短期間の研究のため、より長期的な安全性データが求められる
・盲検化されていない研究デザインのため、バイアスの可能性がある
・有効性については今後の解析結果を待つ必要がある

今後は、より長期的な安全性データの蓄積、多様な患者集団での検証、そして有効性に関する詳細な解析が期待されます。また、他のCGRP標的療法(モノクローナル抗体など)との併用に関する研究も進展することで、片頭痛治療の選択肢はさらに広がることが予想されます。

このような科学的エビデンスの蓄積により、片頭痛に苦しむ多くの患者様がより良い治療を受けられる未来が近づいています。治療に関するご相談は、必ず専門の医師とともに進めていただくことをお勧めいたします。

コメント

まだ日本で使用できない製剤ではありますが、アトゲパントとウブロゲパントの併用療法に関する文献を取り上げました。

 将来的に日本で使用可能になった場合に問題になるであろう予防療法のゲパント製剤に急性期のゲパント製剤を追加して良いかという問題に対しアメリカですでに研究がされており、併用も可能で併用しても副作用の頻度の上昇がない事が確認されたことになります。

 実際に日本でそのように使用できるようになるかというとそれぞれのゲパント製剤の費用の側面、および保険診療として予防薬のゲパント使用中の急性期治療のゲパントの併用を認めてもらえるかが壁で、もしかすると保険診療の監査している医師判断にもなり、地域差がでる可能性もあります。

 使用できるようになれば現状の生活から改善される方もいると思いますので今後の薬剤動向含めて注目していきたいポイントです。

参考文献

1. Ailani J, Lipton RB, Blumenfeld AM, et al. Safety and tolerability of ubrogepant for the acute treatment of migraine in participants taking atogepant for the preventive treatment of episodic migraine: Results from the TANDEM study. Headache. 2025;65:1005-1014.

2. Headache Classification Committee of the International Headache Society (IHS). The International Classification of Headache Disorders, 3rd edition. Cephalalgia. 2018;38(1):1-211.

3. GBD 2016 Neurology Collaborators. Global, regional, and national burden of neurological disorders, 1990-2016: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2016. Lancet Neurol. 2019;18(5):459-480.

4. American Headache Society. The American Headache Society Position Statement On Integrating New Migraine Treatments Into Clinical Practice. Headache. 2019;59(1):1-18.

5. Lipton RB, Bigal ME, Diamond M, et al. Migraine prevalence, disease burden, and the need for preventive therapy. Neurology. 2007;68(5):343-349.

監修医師紹介


大阪頭痛脳神経クリニック
猪股 拓海 Takumi Inomata

◎資格・所属学会
日本内科学会 内科専門医
日本頭痛学会 頭痛専門医
日本神経学会 脳神経内科専門医

◎専門分野
脳神経内科

略歴
2018年
秋田大学医学部医学科 卒業
市立秋田総合病院 初期臨床研究プログラム
2020年
市立秋田総合病院 脳神経内科
2022年
国立病院機構 あきた病院 脳神経内科
2023年
市立秋田総合病院 脳神経内科
2025年
天王寺だい脳神経外科
2026年
大阪頭痛脳神経クリニック

天王寺だい脳神経外科
山田 大 Dai Yamada

◎資格・所属学会
日本脳神経外科学会 専門医
身体福祉障害者指定医
難病指定医
日本脳神経外科コングレス
日本頭痛学会
日本脳卒中学会
日本認知症学会
日本頭痛学会 頭痛専門医

◎専門分野
頭痛の治療
認知症の治療
首、腰の病気、しびれ
血管の病気
めまい、たちくらみ
てんかん
高血圧、高脂血症、糖尿病
リハビリテーション

略 歴
2013年
近畿大学医学部医学科 卒業
高砂市民病院 初期研修医 内科、外科、製鉄記念広畑病院 救急科
2015年
医療法人寿会 富永病院 脳神経外科
2018年
医療法人寿会 福島県 総合南東北病院 脳神経外科
2019年
医療法人寿会 富永病院 脳神経外科
2021年12月
医療法人寿会 富永病院 退職
2022年2月
天王寺だい脳神経外科 開院

基本情報


大阪頭痛脳神経クリニック

・住所 : 大阪市北区茶屋町6-6 TATSUMI茶屋町Bld.
・TEL : 06-6459-7268
・FAX : 06-6459-7269
・休診日 : 火曜・祝日
・アクセス
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